ミニノートPC「HP mini 1000 Vivienne Tam Edition」は、日本の女性にとって、印象の薄いPCブランドともいえる日本ヒューレット・パッカードが、ライフスタイルの提案という切り口から、女 性層の購入を促進することに成功した製品だ。実際、購入者の56%が女性ユーザー。しかも、販売台数はアジア地域で最も多く、Vivienne Tam Editionのベースとなった「HP mini 1000」の後継機が発売されたあとも、後継機を上回る販売台数を維持したほどだ。
日本ヒューレット・パッカードはどんなマーケティング施策を展開し、成功へとつなげたのだろうか。パーソナルシステム事業統括モバイル&コンシューマビジネス本部宣伝部部長の甲斐博一さんに引き続き話をうかがった。
――日本独自のマーケティング施策とはどんなものですか。
甲斐 欧米ではヒューレット・パッカードのブランドが浸透していますから、製品の純広告が基本となっています。ところが、日本 ではまだヒューレット・パッカードのブランドそのものが浸透していません。そのなかで、製品の広告を展開しても効果が薄い。そこで、ファッション誌を中心 に、記事体のタイアップ広告を展開しました。グローバル戦略のなかでは純広告だけが認められていましたから、本来はやってはいけない手法です。
しかし、日本における当社の現状や、日本では雑誌が強い情報発信力を持っていることを説明し、日本だけ特別にこれを実施しました。しかも、記事の 内容は、当社から提案するのではなく、雑誌の編集部に提案してもらい、ヒューレット・パッカードの名前や製品名もほとんど出ない内容とした。
ある雑誌ではクッキングレシピとして、PCの利用提案を行ったのですが、結果として、メーカーの立場ではわからないような、読者の興味を理解した 内容となりました。スムーズに読者の興味につながる記事ですから、ブランドの露出は少なくても、読者にVivienne Tam Editionの印象を強く残すことができた。こうした成果もあり、市場調査によると、女性におけるヒューレット・パッカードブランドの認知度は、この半 年間で3倍も向上しています。